さー、屋号も決まりスペースも用意出来ましたが、足りないのはお客様です。 友人が気を利かして紹介してくれたりもありましたが、なかなかリピートして頂くことは難しかったです。 勉強しただけで経験が浅いのですから、どうしたものかと悩んでいたある日ある時電話が鳴りました。
女性からのエステの勧誘でした。
当時はそういう電話がとても多くて、いつものかな?と思い切ろうと思ったのですが、丁寧なやり取りに惹かれ質問に答えていました。アロマを勉強したことや、自分でやっていきたいということも。
そうしたらその方は、「あなたに会ってみたいわ!吉祥寺まで行くのでお茶しませんか?」と仰いました。ビックリです。
見ず知らずの方がお声をかけてくださったのですから。
お約束して、カフェでお会いしました。
長年エステシャンをやっておられるだけあってとても素敵な方で、50代前半くらいお姉さまでした。私の話を丁寧に聞いてくださった後、「実は、本当はあなたに矯正下着の副業を勧めようと思ってきたのよ。でも、お話を伺っていたら、あなたがやっておられるアロマテラピーというものをうけてみたくなったわ!」と仰ってくださいました。そして手を触って、「手が固いのはよくないわね。」と言われました。確かに私の手は、家事でごわごわになっていましたが、手入れもろくにしていませんでした。彼女の手と言えば、マシュマロのようにふわふわしていていたのです。これがエステシャンの手なんだー。
後日伺う前にこの手を何とかしたい!と色んなお店に行って何かいいものはありませんか?と聞き、角質を柔らかくする塩とクリームを購入しましたが、これがなかなか手ごわく、すぐに角質が柔らかくはなりません。どんどんお約束の日は近づいてきます。どうにもならなくて、ネイル用のファイルで削って臨みました。場所は高円寺。ベルヴィというサロン。営業が終了後お邪魔しました。足湯器、精油、カルテ等持参して。
プロに施術させていただくのは初めてでしたからどれだけ緊張したことか。一番緊張したのは、終わったあとのお話でした。「あなたは、始めて間もないのですから技術はまだまだよ。でもね、あなたの手には気があるわ!うちのサロンで勉強してみる?月にいくら稼ぎたい?」と聞かれました。何にも出来ない私を雇ってくださるなんて!!!私は、また神様に出会ってしまった!「ありがとうございます。3万円もあれば十分です!」あまりにも嬉しくて家族に相談する前に決めていました。
何が嬉しかったかと振り返れば、一言誉めてくださったこと。その言葉は財産になりました。そのあと家族にも承諾を得てアルバイトが始まりました。長年主婦をしていた私の手の平はなかなか柔らかくならず、「あなたの手はお足むきね」とまで言われる始末。了解!お足ならお任せくださいませ。それでも、フェイシャルのトレーニングは合間でやってくださいました。機械の扱いが不器用な私には本当に難しく思うようにいかない手を恨めしく思いました。「アロマの人達は技術はない人が多い」とも仰っていました。確かにそう言われてみればそうだなーと実感し反省し、そう言わせないものを身に着けたいと思いました。そして様々なプロ根性のようなものをここで学ばせてもらいました。
先生は、プロとして厳しい面をたくさんお持ちでした。
ご自身のハンディキャップも見せてくださり、それを気づかれないようにこんな努力をしていると見せてくださいました。
言われるまで全く気付かなかったのですから、驚きました。
そこまでするのは、自分がそのままをさらけ出していたら、お客様に気を使わせてしまうからだと。素晴らしいプロ魂。
先生は、スタッフを育てることもお上手でした。
20代の若いエステシャンが飛び込んで来たときも、年上のスタッフを差し置いて店長になさいました。そして、あなががやりたいようになさいなさいと見ておられました。
後に聞いた話では、その方が独立される時お祝いに支度金を持たせて送り出されたと聞きました。そこまでできる方を見たことも聞いたことがなかったので、女性でも意識を高く持っていればこんな風になれるんだと憧れと目標になりました。
1年ほど学ばせていただけたことは、その後歩んでいく自信にもなりました。
そんな時、ベビーシッターを依頼してくれた友人が、旦那様の会社で社員の福利厚生の一環でアロマをやってほしい!と思いもよらないようなお話を頂きました。
渋谷に事務所を構える映画の配給会社で、映画館とカフェが併設されてていました。皆様お疲れで、仕事の合間の30分を頂きました。ベットもないので、社長室の大きなテーブルにタオルや毛布を敷いて、時には試写室の床でも。怖いもの知らずというのは恐ろしいものですね。でも、続けていくうちに、自分の無力さを強く感じ消極的になっていきました。